葬儀の記憶
お通夜で、住職の読経の後、御詠歌のお唱えがあった。
曹洞宗の御詠歌だそうだ。
声も歌も美しかった。
この御詠歌を聴いたとき、ざわざわしていた心が
安らかになっていくのを感じた。
そして、何故かわからないけれど、
この時、夫が安心して旅立っていけると思えた。
ただずっと、心配しないで、大丈夫だよと、祈っていた。
病気のことで、夫に心配も迷惑もかけっぱなしだったから
ずっとありがとう、ごめんねと。
息子と頑張って生きていくから、心配しないでと。
そればかり祈っていた。
常に列の先頭を歩く私、そして後ろに息子。
走る車の窓から、葬儀の案内板が見えた。
この風景を忘れることはないんだろうと思った。